夏と行き、夏が往き、夏に逝く
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
低い座卓に向かい合って、かりかりとシャープペンを走らせるのは佳主馬の仕事。たった四日間という約束で東京から連れ出された健二は当然夏休みの課題なんてもってきておらず、年下の子どもたちに宿題を教えてまわることをもっぱらにしていた。
「重さ十キロの机があります。脚は四本あり、底面の面積は二〇平方センチメートルです。机が床に対してかける力と圧力はそれぞれいくらか。ただし力は各脚に均等にかかるものとする」。
テキストに書かれている問題をさかさまに読みあげて、健二は台所でもらってきた黄色いちらしの裏に絵を描いた。棒が四本。その上にまた一本横に引く。たぶん机のつもりなんだろう。問題がなくて、たとえばこれだけ見せられたとしたら佳主馬は理解できる自信がない。
「まずは力のほうから出そうか。力はなんだったか覚えてる?」
「ニュートン」
「そうだね。じゃあ力が一ニュートンの物体の質量は?」
「一〇〇グラム」
「うん、そこまでわかってるならあとは簡単だよ」
丸暗記した教科書の内容をそのままに言えば健二はうれしそうにうなずいた。
「一〇〇グラムで一ニュートン。じゃあ机は十キロだから?」
言われ、佳主馬はちらしの一部で割り算を筆算のかたちにする。暗算でできるほど算数は得意じゃない。十キロは一〇〇〇〇グラム。それを一〇〇グラムで割るのだから両者から〇をふたつ取りはらって。
「一〇〇」
「正解。じゃあそれが四本脚に均等にかかるんだから」
一〇〇割る四。それくらいは暗算でできる。
「二五」
「うん。そのとおり」
ばかにしている風でもなく健二がうなずいたので、佳主馬は出した数字で解答欄を埋める。そのまま次の問題に移ろうとしたら「佳主馬くんちょっと待った」健二が声をあげた。
「佳主馬くん忘れ物」
「忘れ物?」
「うん。単位」
血が通ってないみたいな白い指先で解答欄をとんとんたたく。
「単位は数字に意味をあたえるものだよ。数学って実は言葉が大事だから、気をつけて」
------------------
ただしく病みあがりで書いてみたらわけわからなくなった。
本当はパスカルまでもっていきたかった。Pa=N / m2