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なつゆき。

夏と行き、夏が往き、夏に逝く

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夏の宿題6 問目:一方通行

 健二はまるで口ぐせのように自分は数学しかできないと口にする。もちろんそれは彼にとって事実なのだろう、しかし数学しかできないからなにももっていないのとは訳がちがう。
 OZ公式の数学に関するコミュニティで不特定多数の観衆にかこまれながら楽しそうにカードゲームに興じるケンジをカズマが見ている。また、相棒を通して佳主馬もその様子を見ていた。
 一見すればトランプゲームのひとつであるスピード。瞬時の判断力と反射神経が必要なスポーツにも似たそれだがカードの出し方が無茶苦茶だ。規則性がわからない。しかしゲームは(あり得ない速さで)つづけられているからそこにはたしかなルールがあるのだろう。参加者と、そしてそれを観て楽しめる者にしかわからない、佳主馬には理解できないルール。
 ナツキの花札にも負けないような速さでケンジはカードを重ねていく。それは対戦相手も同じことで開示された手札を中央に飛ばしては山札を繰る。そしてカードがすべてオープンになるより先にケンジの山札がなくった。
 歓声は、ない。
 OZの魔法があるのだから言葉が通じないわけはない。それはカズマに向けられる声援からもわかる。なのにいまカードでもってたたかっていた彼らは言葉を交わさず、観衆は賛美も罵詈もあたえない。おかしな空間だ。それが当たり前という空気が、そしてそれに馴染んでいる健二が佳主馬には信じられなかった。理解できない。
 第三者の介在を闖入を観覧をゆるさない闘技に興じる健二はまるで別人だ。佳主馬には見えないちがうものを見て笑っている。佳主馬のものを見て楽しめるくせに、佳主馬はなんの感想を抱くこともできない。だって、わからないから。
 カードがふたたび配されて、沈黙に落ちた決闘がまたはじまる。
 ケンジはちらりともカズマを見ないでカードを繰るだけで。
 ひどく、不公平だった。
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